■過払金請求上の問題(取引期間が非常に長い場合)
■昔から借りている方に生じる問題
当事務所では債務整理・過払請求の案件を多数取り扱っていますが、相談にみえる方の中には消費者金融・カード会社との取引が非常に長く、10年20年と借り入れ・返済を続けてきたような猛者もおられます。
こうした方が弁護士に債務整理を依頼して状況を調査すると、一般的には債務が大幅に圧縮されるか、あるいは債務など既に無く過払い状態となっている場合が多くなります。
ただ、取引があまりにも長い方については、その歴史の古さ故に少し特殊な対応が必要となる場合があります。
コラム「完済していても過払い金を請求できる?」でも述べた時効・取引分断の問題が一つですが、そのほか問題となるのが、「取引が古すぎて履歴データの全容が残っていない」という事態です。
消費者金融・カード会社側の体制にもりますが、よく問題になるG社ですと平成5年(1993年)前後までの取引履歴しか残っていないようです。そこで例えば20年以上前から借入・返済をしてきた方などについては、昭和の頃の取引データが残っておらず、過払の金額を算定するための資料を全て揃えることができない場合が出てくるわけです。
■取引履歴がない場合の残高
古い取引データは残っておらず、例えば平成5年(1993年)以降の取引だけが開示されているような場合、取引履歴上はどのように記載されているのでしょうか。
これは実際に取引履歴を取り寄せてみると分かりますが、取引履歴上は借入をした旨の記載もないのに、最古の取引スタート時点で取引の残高が20万も30万もついた状態でスタートしているという形で表現されます。(以下の表のような状態です)
●平成5年(1993年)10月1日以前の借り入れデータが残っていないのに、残債額だけは表示されているケース
| 取引日付 |
借 入 |
返 済 |
債務額 |
| 1993/10/1 |
\0 |
\15,000 |
\300,000 |
| 1993/11/1 |
\0 |
\15,000 |
\292,389 |
| 1993/12/1 |
\0 |
\15,000 |
\284,358 |
|
これは「いつ、いくら借りて返した」という具体的なデータは残っていないものの、少なくとも最古のデータ時点では債務がそれだけ残っていたということです。
この段階でまず注意すべきことは、この最古データ時点での債務残高も、利息制限法に違反した違法金利に基づいて算出された残債であるという点です。
特に10数年あるいはそれ以上前の取引ということですと、利息も年利40%近い超高金利ではなかったでしょうか? この違法な超高金利に基づく債務残高を認めた上で法定利率内での再計算をスタートさせるようでは、あまりにも不合理です。また取引のスタート時点で残高が30万かゼロかでは、最終的に請求できる過払金が100万単位で変わってくることも珍しくありません。そこで、こういった記載は頑張って覆していかなければなりません。
■残高無視計算(残高ゼロ計算)
残高ありの計算スタートを覆すにしても、なにかしら証拠がないと決め手に欠けるものですが、一つの手がかりとすることができるのは、十数年前に最初の借入をした時の日付や契約書です。具体的な取引のデータが無くても、こういったものが相手方に残されている場合があります。そこで、この初回契約時を基準にして、それ以前の取引情況を推定するという手法には一定の合理性があるでしょう。
たとえば取引履歴上では平成5年(1993年)から残債30万円でスタートしているものの、初回契約が平成元年(1989年)であると判明した場合、平成元年から平成5年の間で約4〜5年分の取引データが失われていることが分かります。
こうした場合、超高金利のもとで4〜5年も取引を継続していたことが推定される以上、法定利率で再計算した平成5年時点の債務は、30万円どころかむしろ既に過払いとなっている可能性もあるし、少なくとも残高はゼロであるはずだと主張するわけです。
これが、いわゆる残高無視計算(残高ゼロ計算)というものです
●初回取引の時点から残高無視計算(残高ゼロ計算)した場合(マイナス金額は過払状態を示す)
| 取引日付 |
借 入 |
返 済 |
債務額 |
| 1993/10/1 |
\0 |
\15,000 |
\-15,000 |
| 1993/11/1 |
\0 |
\15,000 |
\-30,063 |
| 1993/12/1 |
\0 |
\15,000 |
\-45,186 |
|
■訴訟による解決
残高無視計算(残高ゼロ計算)を用いて法定利息での再計算を行うと、計算スタートの時点から過払状態となることが多く、その後10数年にわたって過払が積み重なっていく状態となるため、過払い金は非常に高額となってきます。
また、過払い金の内訳は過払元金と過払利息に分けられますが、残高無視計算(残高ゼロ計算)では過払い状態の期間が長くなることが多いため、過払い金の元金に対して生じる過払利息(年利5%)だけで10万単位になるなど、利息部分が大きくなるケースが多いことも特徴的です。
こうした高額の請求を交渉でまとめようとした場合、双方の主張する金額はなかなか折り合いません。サラ金側としても、計算スタート時点での残高をどうみるかによって返金額が100万単位で変わってくるわけですから、おいそれと残高ゼロで計算した過払い金額を支払おうとはしないわけです。まして、過払元金だけでなく利息も付けた満額を支払わせようとするなら、相当の抵抗が予想されます。
当事務所としては、こうした場合まで交渉を頑張っても内容の進展が期待できませんから、速やかに訴訟を起こしてしまったほうが納得のいく結果となることが多いと考えております。
残高ゼロ計算での過払請求訴訟は通常、訴額も140万円を優に超える高額訴訟となるため、地方裁判所管轄の事件となります。地裁では弁護士以外は代理人になれませんし、サラ金側も弁護士を代理人として立ててくることが多いため、弁護士間で推定計算を出し合うなど、やや専門的な場となってきます。
ケースによって有利不利はありますが、こういった残高無視計算も当事務所では合理的であると判断できるケースでは積極的に主張し、速やかに訴訟提起して回収しております。
様々な解決実績がありますから、まずはご相談いただければと思います。
また、こういった長期の高金利取引を今まで続けてこれたような方は、本当は借金などしなくても十分生活できる経済力のある方なのですから、ともかくこの機会に債務整理して、生活を立て直し再スタートされることをお勧めします。
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