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自己破産 裁量免責を得るための積立(免責積立)

自己破産の手続が管財事件として開始した後、破産管財人からの打診を受けて、金銭の積立を実施する場合があります。
いわゆる「裁量免責のための積立」、あるいは「免責積立」と呼ばれているものです。

激しい浪費やギャンブルなど、本来であれば「免責不許可」も検討せざるを得ないケースについて、破産管財人から、この積立を提案される場合があります。事前に取り決めた金額の積立を一定期間きちんと行うことで、「裁量免責」の可否を判断する際、有利な事情として考慮されるというものです。

比較的レアケースですが、名古屋地方裁判所の管轄では現在も存在している運用ですから、今回ご紹介します。



 

免責積立の目的は?

「免責積立」という制度が法律でルール化されている訳ではなく、現状のままでは免責を認めがたい問題があるケースについても、何とか裁量免責を認めていく余地を残すための実務運用として行われている手法です。
基本的には、以下のような観点から実施されるものと考えています。

①:「不当に流出した財産」に相当する金額を事実上回収して配当を行うことで、債権
者の損害を少しでも補填する機会とする

②:毎月の積立をご本人に継続してもらうことで、生活の再建を真面目に行っているこ
とのテストとする

③:ギャンブルなどの浪費的行動について、ご本人の反省を促す機会とする

 
債権者への配当(①)を実施する形が理想的ですが、実際には積立金が配当を実施可能な金額に満たず、配当を行わないまま裁量免責となるケースもみられます。

 

免責積立の打診を拒否できるか?

この積立は、破産した方ご本人の同意に基づいて実施されるものです。ただ、裁量免責の判断に大きく影響する部分ですから、積立を拒否するという選択肢は、現実的ではないでしょう。
もちろん、前提となる事実関係について破産管財人や裁判所に誤解がある場合は、弁護士から説明や反論を行いますが、積立の実施という結論部分は、基本的に変わらないと思っていただく方がよいと思います。

 

免責積立の原資は?

免責積立は、「破産手続開始決定」が出た後、お給料から積み立てていく形が基本です。
以下例のとおり、破産手続の原則ルールでは「破産手続開始決定が出された日」以後に取得した財産(いわゆる新得財産)は裁判所に没収されませんが、免責積立は事実上、この例外という事になります。

破産の原則ルール モデルケース1

※自由財産の拡張が上限額(99万円)まで認められることを前提とします。

「破産手続開始決定が出た日」時点の財産総額が119万円の場合
→99万円までしか手元に残せないため、超過している20万円は、破産管財人の管理する破産財団へ差し出すことになります。

破産の原則ルール モデルケース2

※自由財産の拡張が上限額(99万円)まで認められることを前提とします。

「破産手続開始決定が出た日」時点の財産総額が89万円あり、その数日後に給料30万円が入った場合
→給料30万円が入った時点で、財産総額が合計119万円になっています。しかし破産手続開始決定日の財産総額は89万円ですから、自由財産99万円の範囲内です。
また給料30万円は「破産手続開始決定の後に得た財産」(新得財産)です。
この場合、給料を含めた手元資産を破産財団に差し出す必要はありません。

免責積立が行われる場合

「破産手続開始決定が出た日」の数日後に給料30万円が入った場合
→この給料30万円は新得財産ですが、免責積立を行う場合,この給料から事前に取り決めた金額(例:毎月3万円)を、破産管財人名義の銀行口座に一定期間、振り込みます。

 
 
このように「免積積立」が行われる場合、弁護士費用や予納金を準備した上で、さらに追加の金銭的負担が生じる事となります。ご本人様としては予想外の支出となり、しばらく苦しい生活になるかもしれません。

しかし「免責積立」の打診があるケースは例外なく、相当に激しいギャンブルや浪費などの問題行動があったはずです。裁量免責を得るための有利な実績となる積立ですから、ここは頑張っていただく所です。

 

免責積立を行う期間

免責積立を行うことになる期間は、案件にもよりますが、短くて2~3か月、長くて5~6か月程度が多いと思います。
この期間中、一定額の積み立てを毎月実施しつつ、家計簿を破産管財人に提出して、家計収支のチェックを受ける形が基本となります。

免責不許可の可能性があるケースについて、破産管財人による生活内容の監督を受けている期間となりますから、浪費的な支出、使途不明な支出などが発生しないように十分注意して生活する必要あります。

 

免責積立を完了した場合

「免責積立を行った上で、それでも免責不許可となってしまった」というケースは、当事務所では過去1件も確認されていません。

激しいギャンブルや浪費を行ってしまい、裁判所から「免責不許可」まで検討されてしまうケースであっても、裁判所や破産管財人の指示にきちんと対応していくことで裁量免責を得ることが十分可能であることは、こうした点からもお分かりいただけると思います。

 

まずは無料法律相談を

「免責積立を行うべきケースか」の判断は,裁判所や破産管財人により行われますから、事前にその有無や内容を確実に予測することはできません。ただ一般論として、浪費やギャンブルの程度が激しくなるほど、問題のある案件として、免責積立を指示される可能性は高まってくるでしょう。

あまり状況が悪化してしまわないうちに、弁護士の無料相談を受け、解決に向けた正確な知識を得ていただきたいと考えております。

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