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自己破産で「退職金」は自由財産となるか?
★自己破産しても、「退職金」については、「支給予定額の8分の1」だけが財産評価額としてカウントされます。
他の財産と合わせて、自由財産拡張の上限99万円の範囲内であれば、退職金も自由財産として認められることが通常です。
★退職金が非常に多い方でも、自由財産拡張の上限99万円を超過した部分を破産財団に組み入れることで、退職金全額を残すことができます。
自己破産をしても、勤務先を退職するよう求められたりはしません。
★中小企業退職金共済(中退共)・小規模企業共済の退職金は例外扱いとなっており、その額にかかわらず全額を残すことができます。
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正社員として一定の勤続実績がある方や、官公庁にお勤めの方などは特に、「現時点での退職金の支給予定額」が問題となりがちです。
この点を明らかにしなければ、自己破産の手続を進めることはできません。
とはいえ破産手続上は、原則的に「退職金の8分の1」だけが財産評価額としてカウントされ、退職金の全額が自由財産として認められることが通常です。
自己破産すると、多額の退職金が全て没収されるといった展開にはなりませんし、もちろん勤務先を退職する必要もありません。
自由財産拡張には、全財産を合計して上限99万円という枠がありますから、退職金についてもこの枠内での配分を検討する必要がありますが、弁護士があなたのご希望をお聞きしつつ、具体的なプランを提案します。
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退職金の計算方法 モデルケース
厳密には「破産手続開始決定時」の退職金支給予定額が基準となります。
ただ、そこまで厳密には考えず、「自己破産の申立時」または、事前に勤務先から取得した直近の「退職金支給予定額の証明書」に記載された金額にもとづいて退職金の価値を考えるケースも多いです。
★退職金の支給予定額:240万円
→ 自己破産の手続上は「8分の1」である30万円の財産権として評価
このように自己破産や個人再生では、個々の財産について実際の額面額ではなく、一定の調整を行った「評価額」としてカウントする場合があります。
「退職金」もその一つであり、実際の支給予定額が、そのまま財産としてカウントされる訳ではありません。
退職金を含めた「自由財産拡張の申立」
モデルケース
1 手持ち現金:10万円
2 預貯金:合計40万円
3 保険の解約返戻金:30万円
4 自動車:無価値
5 退職金:400万円
→ 「8分の1」である50万円が評価額
【 財産評価額の合計 】:130万円
上記モデルケースの通り、退職金支給予定額が400万円あっても、破産手続上は50万円の財産権としてカウントされます。
自由財産拡張申立の上限は、原則として「手持ち現金も併せて合計99万円」ですから、このケースでは合計財産額が99万円を31万円、超過しています。
したがって、こうしたケースでは「退職金」「保険」「自動車」はそのまま残すことを前提に、調整しやすい預貯金について、一部だけ自由財産拡張の申立を行うことで、合計99万円となるように「自由財産拡張の申立」の範囲を調整することが一般的です。
(例)
「手持ち現金10万円+預貯金9万円+保険解約返戻金30万円+退職金50万円」=合計99万円
退職金が高額になる場合 モデルケース
1 手持ち現金:10万円
2 預貯金:合計40万円
3 保険の解約返戻金:30万円
4 自動車:無価値
5 退職金:640万円
→ 「8分の1」である80万円が評価額
【 財産評価額の合計 】:160万円
上記モデルケースでは、たとえ「預貯金」40万円の全額について自由財産拡張を行わないこととしても、まだ上限99万円を21万円、超過しています。
こうした場合、さらに「保険」も諦めるという選択肢もありますが、裁判所から「破産手続開始決定」が出された後の労働に基づく給与・賞与は、いわゆる「新得財産」であり、破産手続上の「財産」にカウントされないため、この部分で調整することも可能です。
つまり、「破産手続開始決定後の給与・賞与」から21万円を工面して、破産管財人に提出することで、預貯金を除いた「退職金」その他の財産について、全て自由財産として残すという方式です。
最終的には裁判所の判断となる部分ですが、こうした方式もごく一般的なものです。
財産総額が多い方については、ご本人の希望される方向をお聞きしつつ、具体的な自由財産拡張申立の方向についてもご提案を差し上げます。
場合により「4分の1換算」の
ケースもあります
退職金は基本的に、支給予定額の「8分の1」換算でカウントされます。
これは退職金請求権の「4分の3」が本来的自由財産であり、債権者が差し押さえ可能な範囲は残り「4分の1」(民事執行法第152条2項)であることを前提とし、退職金は勤務先の業績悪化や懲戒処分等の事情から、実際に全額受給されるかが不確実であるという特殊性に鑑みて、「4分の1」のさらに半分「8分の1」として経済的価値をカウントするという考え方です。
このため、比較的近い時期に退職が予定されており、退職金予定額が現実化する蓋然性が高いケースについては、8分の1という低い財産評価とする必然性がないと判断され、「4分の1」で財産的価値をカウントされる可能性もあります。
現実化した退職金は、預貯金の
一部となります
裁判所から「破産手続開始決定」が出される前に退職金を受領したケースは、どうなるでしょうか?
この場合、退職金の支給によって「退職金請求権」という財産権は消滅し、現実に支給された退職金は、あなたの預貯金の一部となっています。
この場合、その財産的価値を「8分の1」ないし「4分の1」といった低い財産評価額とする理由がありませんから、その全額が財産としてカウントされます。
したがって、仮に数百万円の退職金が支給されたケースでは、他の財産と併せて99万円を超える部分については自由財産として拡張されず、破産管財人の管理財産(財団)への組み入れ対象となる可能性があります。
このように、支給により現実化した退職金は、原則的に「8分の1」「4分の1」といった低い財産評価を受けませんから、自己破産や個人再生をお考えの方は、退職時期については慎重に検討していただく必要があります。
中小企業退職金共済(中退共)
・小規模企業共済
中小企業退職金共済制度は、中小企業退職金共済法に基づき設けられた、中小企業のための退職金制度です。
小規模企業共済制度は、国の機関である中小機構が運営する、経営者のための退職金制度とされています。
この共済から支払われる退職金は、法律上、本来的自由財産とされており、破産手続で没収されることはありません。
自由財産拡張の申立によって裁判所の個別許可を得なくとも、その全額を残すことができます。
ただ、そもそも「自由財産拡張」という制度の趣旨は、破産した方ご本人の今後の生活維持を考慮したものですから、中小企業退職金共済・小規模企業共済の退職金が高額になる方については、預金・保険など他の所有財産に関する自由財産拡張申立について、拡張が認められる範囲が狭くなる可能性はあります。
一長一短という感じですが、こうした可能性も念頭に置いて進める必要があります。
※一般的な「退職金」については、その支給予定額が高額になっても、あくまで「8分の1」の財産権として評価されるだけであり、退職金予定額が高額となるケースであっても、他の財産の自由財産拡張への影響は通常ありません。
したがって中小企業退職金共済(中退共)・小規模企業共済は、破産手続上の「退職金」とはかなり異なるものとお考えください。
自己破産で「退職金」は自由財産となるか?
まとめ
以上のとおり、退職金も自由財産として認められるケースが大多数ですから、過度に心配される必要はありません。
むしろ、破産申立前の準備事項である「退職金の支給予定額を証明する資料を、勤務先からどう確保するか」という点の方が悩ましい部分かもしれません。
いずれにしても、この部分を避けて自己破産の手続を進めることはできませんから、弁護士がこれまでの事例に照らし、具体的なプランをご提案します。
まずは「名古屋駅 弁護士の無料法律相談」をお申込みください。