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自己破産 親族・知人・勤務先からも借りている方

親族や知人からの借入がある場合、その相手は、破産手続上の「債権者」です。
したがって他の債権者と同様、破産申立書類における「債権者一覧表」に掲載する必要があります。
 
親族や知人に「債権を放棄」してもらうことができれば、基本的には破産手続上の債権者から外して進めることが可能です。
 
★特定の債権者を故意に申告せず破産申立を行った場合、「虚偽の債権者名簿」提出行為(破産法第252条1項)として免責不許可事由になりますから、十分注意してください。
当該債権が「非免責債権」(破産法第253条1項6号)となるリスクもあります。
 
★親族や知人にだけ優先的に返済をしてしまうと、免責不許可事由に該当するリスクがあります。
また破産管財人の「否認権」行使によって流出財産を回収されてしまう可能性もあり、相手には余計に迷惑をかけてしまう可能性があります。
 
「勤務先」「会社」から借入がある場合も、親族・知人の場合と同様に考えてください。
 
破産手続上のルールを守って進めることが、免責許可への最も確実な方法です。
 
当事務所が免責許可に向けたプランをご提案します。
 
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「親族・知人からの借り入れがある」という方は、しばしばいらっしゃいます。
 
「自己破産」を少しでもお考えの方は、借り入れをしている親族・知人についても、他のカード会社や消費者金融と、全く同じ取扱をしなければならない、という点を覚えておいてください。
 
 
<親族・知人も、他の債権者と同じ扱いです>
 
★親族・知人に対する返済も、弁護士にご依頼後は一切止めていただきます。
★親族・知人といった個人債権者も、破産申立書類の「債権者一覧表」に記載します。
★裁判所から「破産手続開始決定」が出ると、親族・知人を含めた全債権者に対して「破産手続開始決決定」の正本が郵送されます。

 
 
「親族・知人を債権者から除外する」「親族・知人だけに優先弁済する」等の不正行為があれば、後述するとおり非免責債権化のリスク・免責不許可のリスクが生じるほか、破産管財人が親族・知人から財産回収を実行するリスクまで生じ、事態が無用に混乱・複雑化してしまう可能性があります。
 
早い段階で「自己破産において、守るべきルール」や「破産手続上、問題となる行為」について、詳しい情報を得てください。
 
弁護士が面談にて、詳しいご説明を差し上げます。
 
まずは「名古屋駅 弁護士の無料法律相談」をお申込みください。
 
 

自己破産における基本的なルール

 
自己破産における大原則の一つが「債権者平等」というルールです。
 
破産手続の準備段階に入った以上、ご本人の所有財産は、破産手続のルールに則った平等な分配が予定されており、特定の債権者に対してだけ、抜け駆け的に優先的な支払を行う事(偏波弁済 へんぱべんさい)は禁止されています。
 
また、ある手続によって不利益を受ける者に対しては、きちんと反論や不服申立の機会を与えるべきという「手続保証」も非常に基本的なルールです。
 
破産手続上の「債権者」は、免責許可によって不利益を受ける立場にあるため、債務者ご本人の免責に異議を述べる機会が保証されています。
 
特定の債権者を「債権者一覧表」に記載しないことで、当該債権者に破産手続が開始されたこと自体を知らせず、かつ「免責異議」を述べる機会を与えない状態を作り出そうとする行為も、破産手続上の重大なルール違反です。
 
 

親族・知人を債権者から適正に外す方法

 
前述のとおり、債権者を不正に隠して破産手続を進めようとする行為は、破産手続上の重大なルール違反です。
 
一方、「お金を借りていた両親・祖父母が高齢のため、裁判所から書類が届いたり、破産管財人から連絡が入ることで、心労を掛けてしまうことは避けたい」というご希望も時々あります。
 
また、主に身内の方から「返済できない状況なのは分かっているから、もう返さなくていいよ」という意思表明をいただいているケースもあります。
 
こうした事情については、また別の問題として検討の余地があります。
 
もし、債権者である親族・知人との関係が現在も良好であり、残っている貸金残高について、「もう返済しなくても構わない」と本心から言ってもらえるならば、「債権の放棄」をお願いするという方法があります。
 
もちろん、その真意を確認し、裁判所に経緯報告する必要がありますから、債権者ご本人には弁護士の作成した債権放棄の書面に署名・捺印をしていただきます。
 
「債権の放棄」が適正に成立していれば、破産手続上も「債権者」として取り扱う必要は無くなりますから、破産手続上の「債権者一覧表」には掲載されず、裁判所から「破産手続開始決定」の正本が郵送されることもありません。
 
実際にはケースバイケースの判断になりますが、これまでの取扱事例では、債務者本人のご両親等について、事前に「債権放棄書」をいただいて「債権者一覧表」から除外した状態での破産申立を行うことで、特に裁判所や破産管財人から問題視されることもなく進められています。
 
「債権の放棄」を伴う債権者一覧表を作成する場合、裁判所に対してその内容・経緯をきちんと説明できるように、当事務所にて段取りを立てつつ進めます。まずはご相談ください。
 
 

債権の放棄をお願いできない場合

 
債権者である親族・知人との関係が悪化しており、「債権の放棄」をお願いできそうにない場合は、破産手続のルール通りに進めるほかありません。
 
破産申立時に提出する「債権者一覧表」に相手の氏名・住所・連絡先を記載し、裁判所から郵送される「破産手続開始決定」が確実に届くように準備を進めます。
 
「あの人はお金にうるさいから、破産することは知らせないでおこう」
「破産することを知られると、免責異議を出されそうだから黙っておこう」

 
こうした考えは、後述するとおり非常に危険ですから、絶対に止めるべきです。
 
こちらの対応に不正があれば、相手の追及を余計に強めてしまいかねませんから、個人的な借り入れについても、必ず全て申告をしていただく必要があります。
 
仮に親族・知人から免責異議が出たとしても、弁護士がきちんと反論・弁明を行いますから、全てお任せください。
 
 

債権者を申告しない行為のペナルティ

 
もし、借り入れのある親族・知人の存在を弁護士に申告せず、債権者一覧表から外した状態で破産手続を進めた場合、当該債権が非免責債権化するリスク、さらには免責不許可となるリスクがあります。
 

非免責債権となるリスク

 
破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(破産法第253条1項6号)、ないし過失により債権者一覧表に記載しなかった債権(東京地裁平成14年2月27日判決)は、非免責債権となる可能性があります。
 
■破産法第253条
1項 免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
6号 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)

 
 
★東京地裁平成11年8月25日判決(旧破産法下での判決)
 
「破産者が免責許可決定を受けるに際して破産裁判所に提出した債権者名簿にその連帯保証債務に係る債権者を記載していなかった場合には(中略)免責の効果は生じない。
 
 
★東京地裁平成14年2月27日判決(旧破産法下での判決)
 
「破産者が、債権の存在を知って債権者名簿に記載しなかった場合のみならず、記載しなかったことが過失に基づく場合にも免責されないと解すべきである。」
 
 

免責不許可となるリスク

 
「虚偽の債権者名簿(債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む)」(破産法第252条1項7号)を提出する行為は、免責不許可事由の一つです。
 
 
■破産法第252条
1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。(中略)
7号 虚偽の債権者名簿(第248条第5項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第1項第6号において同じ。)を提出したこと。

 
 
★名古屋高裁平成5年1月28日判決(旧破産法下での判決)
 
「相手方は、破産宣告後の免責申立事件において、抗告人が免責不許可の事由となるべき資料を調査、収集した上、これらを裁判所に提出することあるべきを危惧し、ひいては免責不許可の結果となることを恐れるの余り、殊更抗告人の本件債権を債権者目録に記載しなかったものと推認せざるを得ない」
「本件の資料に現れた前説示の諸事情に鑑みると、相手方に対してはその免責を不許可とするのが相当である。」
 
 

親族・知人に対する優先的弁済
(偏波弁済)のペナルティ

 
「親族・知人からの借り入れだけは、きちんと返済したい」というご希望も多々あります。
 
弁護士に破産申立を依頼し、他の債権者への弁済を止めているのに、親族・知人に対する返済だけは黙って続けてしまったという方も、時々いらっしゃいます。
 
特定債権者への抜け駆け的な返済(偏波弁済 へんぱべんさい)は、ご本人のスムーズな自己破産・免責許可を妨げてしまう典型的な不正行為であり、様々なリスクを生じさせます。
 
 

偏波弁済により「管財事件」となるリスク

 
弁護士に自己破産申立を依頼する直前、または依頼後に、親族や知人に対して、抜けがけ的な優先弁済(偏頗弁済)をしてしまった場合、「同時廃止」が認められず「管財事件」となる可能性が高まります。
 
偏頗弁済によって管財事件となれば、最低でも20万円の「予納金」を裁判所に納付する必要があります。
せっかく「同時廃止」の要件を満たしているケースであっても、経済的にも時間的にも負担の重い手続にシフトする要因を、ご本人自ら作り出してしまうことになります。
 
 

偏波弁済 破産管財人が「否認権」を
行使するリスク

 
親族・知人等への偏頗弁済を行った場合、前述のとおり「管財事件」となるリスクがあります。
就任した破産管財人の業務内容の一つが、不正に流出した財産を取り戻すことです。
 
偏頗弁済が認められるケースでは、破産管財人が「否認権」を行使して偏頗弁済を無効化し、弁済相手である親族・知人から弁済金を回収する可能性があります。
 
特に弁済相手が「親族」、あるいは「同居者」の場合、「債務者本人が、すでに支払不能な状態であることを知りながら弁済を受けた」という推定(悪意推定)が及ぶため(破産法第162条2項1号・第161条2項3号)、「否認権」がより容易に成立します。
 
「親族・知人だけには迷惑を掛けたくない」というお気持ちで優先弁済を断行したことが、むしろ余計に迷惑を掛けてしまう結果となりかねませんから、絶対にこうした不正を行ってはいけません。
 
 

偏波弁済 免責不許可事由となるリスク

 
親族・知人に対する優先弁済は、「否認」の問題とは別に、「免責不許可事由」該当行為となるリスクを生じさせます。
 
免責不許可事由になる偏波弁済(破産法252条1項3号)の要件
1 当該債権者に特別の利益を与える目的で行う
2 債務の消滅に関する行為であり
3 その方法若しくは時期が、債務者の義務ではないこと

 
典型的には、自己破産を弁護士に依頼した後でありながら、隠れて親族・知人だけには弁済期到来前に一括弁済していたようなケースが該当します。
 
前述した「否認」の問題も同時に発生しますから、債務者ご本人も、親族・知人も、どちらも苦しい立場となってしまうリスクがあります。
 
このような不正行為は、最初から止めておくことが賢明です。
 
 

自己破産 親族・知人からの借り入れが
ある場合 まとめ

 
「親族・知人からも借り入れがある」方が自己破産する場合、こうした不正行為が起こりがちであるため、裁判所や破産管財人も特に慎重なチェックを実施しています。
 
今回の自己破産について、近しい人である親族・知人には、あまり関与してほしくないというお気持ち自体は理解できなくもないですが、自己破産・免責許可という制度の根本的なルールに関わる部分であるため、違反行為に対しては厳しい判断を覚悟しなければなりません。
 
前述したとおり、協力的な債権者については、「債権の放棄」をお願いすることで、あらかじめ破産手続上の債権者から除外する方法が有効です。
 
対立関係にある債権者については、破産手続のルール通りに債権者一覧表に記載するしかありませんが、もし免責異議が出てきても、弁護士がきちんと反論や弁明を行う形で対処しますから、過度に心配される必要はありません。
 
ハッキリ申し上げれば、免責異議を恐れるあまり、債権者隠しなどの不正を行う方が、よほど免責不許可の現実的なリスクがあると思います。
 
どのような案件でも、当事務所はあくまで全て正直に申告し、正面から免責許可を得ていく方針をご提案します。
 
それが最もスムーズで確実な、免責許可を得るための方法です。

 
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