★名古屋地方裁判所で個人再生をする場合も、返済予定額を積み立てるテスト(通称「履行テスト」)が実施さ…
個人再生と住宅ローン
「住宅ローンの支払が苦しい」というご相談
マイホームの住宅ローンを支払っているのに、それ意外にも消費者金融やカード会社からの借り入れまで増えてしまい、もう支払いきれないという方からのご相談を頂きます。
給与の減額、職場の倒産、激しい浪費、株やFXの失敗など、ご事情は人それぞれですが、一般的に考えても住宅ローンの支払いだけで相当の負担と思われますから、さらにキャッシングやショッピングの支払額までが増えてしまえば、支払いきれない状態になってしまうのも無理のないことかと思います。
こうした場合、その後再び収入が増加・安定する見込みがあるかどうか微妙であれば、いっそ自己破産して住宅を手放し、収入の範囲内で賃貸で生活をしていく方が、むしろ安定した生活再建に繋がるのではないか、という考え方もあります。
しかし、「住宅をどうしても残したい」というお気持ちは皆さん大変強いものですし、家族が大人数であれば、家賃と住宅ローンの支払額が大差ないという場合もあるでしょう。
このような場合、自己破産ではなく、個人再生という手段による経済的再建を検討することになります。
個人再生という制度
個人再生という制度について、「イメージがつかみづらい」という方もみられますが、個人再生は自己破産と同じく、裁判所に所定の書類を提出し、裁判所の手続の中で負債額を軽減してもらうという法的な制度です。
自己破産のように負債の支払義務を原則的に全て免責してもらうのではなく、負債の何割かを一部減免してもらって、残った負債を分割返済していくという点が、まず異なっています。
個人再生には「小規模個人再生」「給与所得者等再生」の2つがあり、要件などが一部異なっていますが、こうした基本部分は共通です。
個人再生手続の再生計画
個人再生手続の中でも中核部分といえるのが、裁判所に対する「再生計画案」の提出です。
これは簡単に表現すると「○円まで減らしてもらった負債を、○円ずつ○回で返済していきます」という具体的な返済計画案です。
裁判所はこの再生計画案について、その履行可能性を検討したり、債権者の同意・不同意を募った上で、これを認可するかどうかを最終的に判断します。
裁判所によって再生計画案が認可されると、再生計画に記載された内容通りに負債の一定割合が免除されますから、あとは残った負債を再生計画の内容に沿って返済していくことになります。
案件の内容にもよりますが、多くのケースでは、住宅ローン以外の、カード会社や消費者金融からの借り入れ金は、70%から80%が免除されるといった大幅な債務免除が実現されています。
しかも残った債務は通常、利息の発生が止まった固定額になりますから、返済の負担は非常に軽くなることが期待できるのです。
住宅資金特別条項を用いた個人再生
個人再生は自己破産のように、一旦全てを精算して再スタートを図る制度とは異なる「再建型」の制度ですから、生活の基盤となる自己所有の住宅を出来る限り残すことができるように、住宅を担保とした住宅ローンの支払について、他の債務とは異なった特別の扱いをしています。
個人再生手続では、再生計画案の中で、減免してもらった債務を原則3年間(最大5年間)で分割返済していく内容の条項(一般条項)を定めることになりますが、住宅ローンの債務(住宅資金貸付債権)については、住宅ローンを除いた債務とは別の弁済内容の条項を定めます(特別条項)。
多くの方は、住宅ローンの支払いだけは現在も遅れることなく支払われているため、住宅資金特別条項の内容も、住宅ローンについては「従来の約定通りの方式で支払う」と定めることが多いです。
個人再生手続によっても住宅ローンの元金自体は変わらず、利息や遅延損害金も減免されませんが、その支払期間や延滞金の支払方法を修正することは可能ですから、金融機関と協議の上で、従来の返済方針と異なる返済方針を再生計画案に定めることもあります。
再生計画案が認可されると、住宅ローン以外の債務総額が、多くのケースでは大幅に減免されます。結果、住宅ローンを含めた家計全体の返済負担が従来よりも大幅に軽減され、マイホームを残しやすい状態となるわけです。
住宅資金特別条項つき個人再生の注意点
まず確認して頂きたい点は、住宅資金特別条項を用いた個人再生手続において、返済額が減免されうるのは、「住宅ローン以外の債務」であるということです。
住宅ローンも、再生計画によって内容を変更する余地はあるものの、それは返済の方法や回数・期間などの部分であって、原則としては他の一般再生債権のように返済総額自体を減らせるわけではありません。
つまり個人再生を検討するにあたっては、「月々の住宅ローン支払額 + 個人再生を行った場合の毎月の返済予定額」程度の支払は十分可能といえるような経済的状況が前提となります。
裁判所が再生計画の実現可能性を判断するにあたっては、給与明細や源泉徴収票、毎月の家計簿など客観的な資料を求められますから、まず家計の収支をよく洗い出してみて下さい。
個人再生のデメリット、自己破産のデメリット
個人再生は、裁判所を通じた法的な債務整理の手続ですから、自己破産する場合と同じように申立人(ご本人)の住所氏名が官報に公告されるほか、債権者一覧表や家計状況を裁判所に提出して細かく収支のチェックを受けるなど、自己破産の手続と似ている部分も少なくありません。
「自己破産は抵抗があるので個人再生で」とお考えの方は、自己破産について抵抗を感じられている部分が、個人再生であればクリアされるのかどうかを確認する必要があるでしょう。
必ず生活を再建するという意思が不可欠です
個人再生は裁判所を通じた法的な手続ですから、書類の準備や裁判所に対する説明など、必要な対応をきちんと積み重ねていく必要があり、簡単・気軽に済むような手続ではありません。
自己破産のように免責が確定すれば一安心というわけでもなく、再生計画が認可された後も、再生計画に沿って何年も返済を続けていかなければならないのですから、ある意味では自己破産より苦しい側面があるかもしれません。
とはいえ、住宅を残す余地があるという特性は確かに大きなメリットです。
「絶対に自宅を手放したくない」という方については、当事務所の弁護士が精一杯お手伝いをさせて頂きますので、まずはご相談頂ければと思います。
あまり状況が悪化してしまう前に、ともかく早めの法律相談をお勧めしております。
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