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給与所得者等再生とは?

「給与所得者等再生」とは、2つある個人再生のうちの一つです。
少し使いにくい制度のため、あまり用いられていませんが、使用条件に合致したケースでは、「債権者の反対によって再生計画が否決されるリスクが無い」という大きなメリットを発揮することができます。
「可処分所得」試算のため、「源泉徴収票」「給与明細」が必要です。

実務上、この「給与所得者等再生」はほぼ用いられておらず(数%程度)、もう一つの個人再生である「小規模個人再生」を利用される方が圧倒的多数を占めています。

これは「給与所得者等再生」を選択した場合、「小規模個人再生」を選択した場合に比べて、返済総額がかなり高額になってしまうケースが多いためです。

ただ「小規模個人再生」には、「大口の債権者が反対してきた場合」や「半数以上の債権者が反対してきた場合」に再生計画案が認可されないというリスクがあります。

実際には、債権者の反対によって個人再生に失敗することは相当レアケースですが、具体的な債権者の構成によっては、このリスクを現実的なものとして警戒しなければならないケースも時々発生します。

「給与所得者等再生」は、「小規模個人再生」における債権者の反対(不同意)リスクを回避できる点が大きなメリットです。

ご本人の収入や家族構成によっては、「給与所得者等再生」を選択した場合でも、さほど返済総額が高額にならず、解決手段として十分に選択可能というケースも実際にあります。

あなたのご事情は、「給与所得者等再生」を用いるメリットがあるでしょうか?
「給与所得者等再生」を選択した場合の返済予定額は、どの程度でしょうか?

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給与所得者等再生を検討すべきケースの一例

  • 負債総額の半分以上を、1社で占めている大口債権者がいる場合
  • 債権者が1~2社と、ごく少数の場合

こうしたケースで「小規模個人再生」を選択した場合、1社の不同意があっただけで再生計画が否決されてしまいますから要注意です。

この状態を前提とした「小規模個人再生」は、非常に大きなリスクがあると言わざるを得ません。

債権者の意向に影響されない「給与所得者等再生」を用いることで、このリスクを回避することが可能となります。

給与所得者等再生 返済予定額の計算方法

比較上、「小規模個人再生」の場合からご紹介します。
返済総額を算出するにあたり、「小規模個人再生」では2つのルールがありました。

小規模個人再生の返済総額 計算方法> 

A:負債総額から算出される金額(最低100万円、または負債総額を
 5分の1にした額の大きい方)
B:あなたの資産総額(清算価値)

この「A」「B」について、それぞれ別個に計算を行い、金額の大きい方が「小規模個人再生」における最低弁済額になります。※負債総額1500万円までの場合

「給与所得者等再生」においては、上の「A」「B」に加えて、3つめの基準「C」が加わります。

給与所得者等再生の返済総額 計算方法>

A:負債総額から算出される金額(最低100万円、または負債総額を
 5分の1にした額の大きい方)
B:あなたの資産総額(清算価値)
C:「可処分所得」の2年分

「可処分所得」とは、ご本人の収入から、住宅費や生活費や税金を差し引いた後の、手取額というイメージでよいかと思います。

ただ、この「可処分所得」は、あなたの実際の手取額ではありません。
源泉徴収票の記載や、居住地域、ご家族の年齢などの基本情報を、あらかじめ用意された計算式にあてはめて、機械的かつ定型的に算出されます。
無料法律相談の際、弁護士が試算させていただきます。

給与所得者等再生では、上記「A」「B」「C」のうち、「最も高い金額」が最低弁済額になります。

一般的な傾向としては、「C(可処分所得)」の計算結果がかなり高額になるため、「給与所得者等再生を選択した場合」の弁済総額は、「可処分所得の2年分」が最低ラインとなるケースが多くなります。

給与所得者等再生 具体的な返済額試算モデル

上記の3基準を用いて、実際に検討してみましょう。

<給与所得者等再生 モデルケース>

  • 基準【A】(負債総額の基準):負債総額600万円
    → 5分の1である120万円
  • 基準【B】(資産総額):預金・保険・退職金など全財産合計:100万円
    ※退職金は、原則的に支給予定額の8分の1で評価
  • 基準【C】(可処分所得の2年分): 300万円

このモデルケースでは、「A」「B」「C」の計算結果のうち最も高額な結果である基準「C」の300万円が、給与所得者等再生を行った場合の最低弁済額になります

可処分所得は高額になりがちですから、給与所得者等再生を選択すると、「あまり債務総額が減らない」「返済予定額が高くなりすぎて、返済しきれない」という結果になることも珍しくありません。

「給与所得者等再生」を選択可能なケースは、「小規模個人再生」も選択可能です。そして通常、小規模個人再生を選択する方が、最低弁済額はより少なくなります。

上記モデルケースで言えば、小規模個人再生を選択した場合の最低弁済額は、「A」「B」の高い方ですから、「A」基準による120万円となります。

もちろん小規模個人再生には「債権者の不同意による再生計画の不認可」というリスクがありますが、実際に不同意が出るケースはごく少数です。

こうした理由から、前述したような「債権者の不同意リスクを現実的に警戒すべきケース」に該当しない限り、実務上は大部分の方が小規模個人再生を選択している状況となっています。

給与所得者等再生が通りやすいケースとは?

例えば、「配偶者が専業主婦で、未成年の子が複数いるご家庭」は、収入に占める生活費の割合が高くなりますから、働いているご本人の「可処分所得」は低くなる傾向があります。

可処分所得が低い場合、給与所得者等再生を選択しても、それほど弁済総額は高額化せず、現実的な解決手段として検討することも可能なケースは実際にあります。

言い換えてみると、「月々の収入の大部分が、家賃や家族の生活費など、最低限必要な支出でほぼ消えている方」は、類型的には可処分所得が低い結果となり、給与所得者等再生が通りやすくなる傾向があると言えます。

(ただ、あまり可処分所得が低い家計の場合、今度は返済能力が不足する状態が強まりますから、程度の問題にはなります。)

一方、「単身者の方」や「実家住まいの方」は、一般的に「可処分所得」は高額になりがちです。

給与額がそれなりに高い単身者の方となれば、可処分所得がかなり大きくなることが予想され、給与所得者等再生という解決方法が、あまり適さないケースも出てくるかと思います。

とはいえ「債権者の不同意リスクが高く、小規模個人再生では不安がある」という事情がある場合には、「弁済総額が多少高額になったとしても、給与所得者等再生を選択せざるを得ない」という判断も、実際にはあり得るでしょう。

このように「可処分所得」が増える要因、減る要因はそれぞれ複数あります。

おおまかな見通しだけでは具体的な計画が立てられませんから、実際には関係資料を全てご用意いただいた上で、きちんと計算してみることが必要です。

給与所得者等再生の検討が必要と思われるケースでは、事前に関係資料をご準備いただき、無料法律相談の際、可処分所得の試算も行っています。

★★こちらもご覧ください

→ コラム「給与所得者等再生に向いている方」

系列会社の代位弁済にも注意!

弁護士に個人再生や自己破産を依頼されると、特に銀行系ローンについては、系列の保証会社によって代位弁済が行われます。

<借り入れ先 モデルケース>

  • 債務総額:450万円
  • 債権者
    1 三井住友銀行     :200万円
    2 プロミス(SMBC) :100万円
    3 アイフル       :100万円
    4 アコム        : 50万円

このケースでは、「給与所得者等再生」を選択肢として検討すべきでしょうか?

一見、債権者の不同意リスクが顕在化する「負債総額の半分以上を単独で有している大口債権者」が存在するケースではないようにも見えます。

しかし、このケースで実際に個人再生の準備を開始した場合、三井住友銀行の債権200万円は、系列の保証会社であるプロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)によって代位弁済されることが通常です。

結果、プロミスは元から有していた債権100万円に加えて、代位弁済による債権200万円も取得し、負債総額の半分以上を単独で有する合計300万円の大口債権者となることが予想されます。

したがって、このケースでは「給与所得者等再生」の選択可能性を正面から検討すべきです。

このように、後で大口債権者が生じるケースは時々ありますから注意してください。

実際には、しばらくしてから更に別の債権回収会社などに債権譲渡される可能性もあり、最終的な債権者構成を読み切ることは難しいですが、少なくとも系列会社による典型的な代位弁済は、当初から警戒しておくべきです。

「楽天銀行」と「楽天カード」の両方から借りている方、「三菱UFJ銀行」と「アコム」の両方から借りている方も多いので、こちらも注意が必要です。

こうした理由から「どの会社から、いくら借りているか」については、無料法律相談の際、可能な限り詳しくご説明をいただきたいと考えております。

給与所得者等再生 まとめ

「給与所得者等再生」は、少し使いづらい解決方法ですが、「小規模個人再生」を選択した場合に債権者の不同意リスクを無視できないケースでは、解決手段としての存在感が高まってきます。

また、お持ちの財産総額が非常に多く、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」、どちらを選択しても、財産総額によって最低弁済額が決まるケースもあります。

こうしたケースについても、債権者の不同意リスクがない「給与所得者等再生」を選択する実益があると言えるでしょう。

「給与所得者等再生」が選択可能と思われるケースについては、当事務所からも積極的にご提案を差し上げておりますので、一度ご検討いただければと思います。

無料法律相談の際に、関係資料をお持ちいただければ、可処分所得や具体的な返済予定額の詳細な試算が可能です。

まずは「名古屋駅 弁護士の無料法律相談」をお申込みください。

カテゴリ:個人再生 2018/09/19