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個人事業主の自己破産 事業を継続しながら破産できるか?
一般論として、個人事業者が事業を継続しながら自己破産することは難しいという事実があり、それが原則です。
ただ実際には、小規模の個人事業や、一人親方のような業態の個人事業については、事業を継続しながら破産手続を進め、免責許可を得ているケースは珍しくありません。
破産管財人や裁判所の考え方にも影響を受ける部分であるため事前の確約は難しいですが、何とか現在の事業を継続しつつ債務の免責を得られるよう、弁護士が解決のプランをご提案いたします。状況によっては、個人再生による解決も検討してみましょう。
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事業継続しながらの破産が難しいとされる一般的理由
個人事業者が自己破産する場合、原則的には同時廃止ではなく管財事件になり、地域の弁護士が破産管財人に就任して調査を進めていきます。
破産管財人の仕事は、破産したご本人が事業を継続できるように配慮する事ではなく、ご本人から少しでもお金を回収して、債権者に配当する事が大きな部分を占めています。
したがって破産管財人の業務方針は、ご本人の希望しない方向の展開になる場合があります。
まずは破産手続上の原則論をご紹介します。
取引先からの仕入れが困難となる
自己破産の準備に入った時点で、取引先への代金支払も全てストップする必要があるため、通常は商品の仕入ができなくなります。
銀行から融資を受けられなくなる
銀行からの融資についても返済を停止するため、追加融資を受けられなくなります。信用情報に滞納歴が登録されるため、別の銀行での新規融資も受けられません。
在庫商品が処分されてしまう場合がある
破産手続は、ご本人の財産をお金に換えて債権者に配当するという手続なので、在庫商品を含む業務上の財産は、破産管財人により回収・売却されることが原則です。
自動車や機械が処分されてしまう場合がある
在庫商品と同様、ご本人名義の自動車や機械は、破産管財人により回収・売却されることが原則です。
売掛金を破産管財人が回収してしまう場合がある
「売掛金」というと少し分かりにくいかも知れませんが「取引先に対する代金の請求権」とお考えください。
事業をされていると、取引先との間で毎回毎回代金を支払ってもらうのではなく、1ヶ月間の仕事の工賃や代金を、まとめて請求するような形も多いと思います。取引先から今後支払ってもらう予定の未回収代金は、ご本人の財産の一部ですから、破産管財人が回収して配当に回することが原則です。
事業のための契約が、破産管財人に解除される可能性がある
事業者の方が発注者から請け負っている仕事の契約等は、破産管財人が解除か続行かを判断します。もし契約を解除された場合、従来の業務を受注できないため、個人事業の続行は困難となります。
破産手続上の原則からは以上のような方針で破産手続が進行していくため、事業継続が困難となるケースが多くなるのです。
特に、「物を売り買いする業種」や「金融機関からの融資が必要な業種」については、事業を継続しながら自己破産する事が、実際問題として難しい方向になるケースが多いでしょう。
どのような個人事業であれば事業継続が可能か?
以下のようなタイプに該当する個人事業は、破産手続の影響を、さほど受けない場合があります。
■商品の売り買いで利益を上げる業態ではない
■金融機関からの借入は必要ない
■従業員を雇っていない
■自動車や仕事用の機械は無いか、あったとしても数十万円以下の価値
■売掛金は発生しない(即日払い)か、発生するとしても数十万円以下
具体例には、以下のような業種の方々です。(一例)
◆建設・工事関係など現場に出て自ら作業を行い報酬を得ている業態で、ローンの無い古い自動車(ハイエースなど)1台で全ての仕事をされている方
◆元請け会社の自動車を使用して配送業を営んでいる方
◆自宅でパソコン1台を使用してデザインや設計を行っている方
◆ウーバーイーツなど
こうした方々は、取引先への支払いが発生しない業態である事も多く、破産準備に入っても取引先との関係は特に悪化しないため、引き続き仕事を受注できる場合が多いです。
また、事業全体の規模がさほど大きくはなく、ご本人が所有している自動車・工具類・機械類・入金予定の売掛金などを、全て合計した額が自由財産拡張(99万円)の範囲内である場合、それらの財産はそのまま手元に残せる可能性も、それなりに高いです。
したがって、こうした業態の個人事業主に関しては、業務を継続しつつ自己破産することが可能になるケースがあるのです。
事業契約が破産管財人により解除される可能性について
ご本人が取引先と締結している請負契約等を残しておく事で、債権者の配当に充てられるべき財産を減少させる危険があるケースについて、破産管財人がその契約を解除する事は当然です。
一方、そうした危険が認められず、小規模事業者が毎月の利益を出して堅実に営業しているケースについてまで、破産管財人が積極的に契約解除を選択して事業を廃業させるといった展開は、あまり一般的ではないと思います。
破産管財人の判断による部分になりますが、破産管財人としても、目についた事業的な契約を必ず全て解除して回る訳ではないという事は知っておいてください。
自由財産拡張の注意点
個人事業主の方が自己破産する場合、原則的には管財事件となりますから、ご本人が生活していくために必要な財産を手元に残せるよう「自由財産拡張の申し立て」を裁判所に対して行います。自由財産拡張の上限は、原則的に「99万円」です。
ご本人の現金や預金残高、事業用の自動車、これから入金予定の売掛金など、ご本人の財産を全て合計した資産総額が99万円を超過している場合、超過分は原則的に手元には残せず、破産管財人へ差し出す必要があります。これを「破産財団への組み入れ」といいます。
・現金 10万円
・預金 10万円
・自動車(査定額) 70万円
・売掛金 60万円
→合計150万円となり、99万円を51万円超過している
このケースで破産管財人から破産財団への組み入れを指示された場合、ご本人は99万円を超過している額(51万円)を準備して、破産管財人の開設した口座に振り込まなければなりません。
破産財団への組み入れは、必ず一括払でという事ではなく、2~3か月程度の猶予が認められる事も多いです。借入による資金調達はもちろん不可ですから、今後の事業収益やご親族の援助など、何らかの方法で頑張って準備していただくことが必要です。
もし期間内に破産財団への組み入れを完納する見込みが立たなければ、破産管財人から「自動車を売却して51万円を調達してください」といった指示を受け、結果的に事業を継続できなくなる可能性があることは、注意が必要です。
また、自由財産の拡張は無条件に99万円まで認められる訳ではなく、その内容によっては99万円以内の売掛金や自動車等であっても、財団への組入を指示される可能性は残ります。破産管財人の考え方による部分となりますが、こうした展開となった場合も、組入の額によっては事業継続が困難になる場合があります。
事業継続の可能性を高める要素の一例
・リース契約や倉庫契約など、むやみに契約関係を増やさない
・資金繰りが悪化している中で、むやみに事業拡大をしない
・売掛金が高額になる業態にしない
・必須でない資産は処分し、弁護士費用や予納金に充てる
破産準備に入っても事業の赤字が出ているようでは、破産管財人から「今後も事業によって負債を負ってしまうのではないか」「そのような事業を継続する意味は無いのではないか」という判断になりかねませんから、経営の安定は必須といえます。
事業を拡大して業態を複雑化させることは、破産手続においてチェックを受ける項目を増やし、事業継続を実現する上でのリスクを高めると思います。破産する上では、小規模の事業者である方が望ましいです。
売掛金は財産としてカウントされるため、売掛金の増加は財団への組入額を増加させるリスクとなります。可能であれば、一時的にでも売掛金が発生しない状態にした上で破産申立を行う方が安全といえます。
資産総額が99万円を超過してしまう事が事前に予想されるケースでは、事業の継続に必須でない財産をあらかじめ売却して資金を調達し、弁護士費用や予納金を一括で支払っていただく事により、速やかに破産申立を行う方針をお勧めしています。弁護士費用や予納金は自己破産する上で必要な支出ですから、それによって財産総額が減少しても、裁判所に問題視される事はありません。
個人再生による事業続行
個人事業主の方も、「個人再生」によって債務の大幅な減額を得ることは可能です。一般的には自己破産の方が、債務全額の免責を受けられ、今後の返済を行う必要が無くなるため、将来的な事業リスクを軽減できる解決方法といえますが、個人再生は財産処分が行われないというメリットがありますから、案件によっては従来の事業を続行しながらの借金問題解決を、よりスムーズに実現できます。状況に応じて、適切な解決方法をご提案します。
ただ、それらの財産を全てお金に換算した資産総額以上の債務は必ず残るため,これを原則3年(最大5年)で分割弁済していく必要があります。
個人再生は「この分割返済を実行できるという返済能力を、裁判所に示せるか」という部分が最も重要です。
繰り返しになりますが、個人再生では一定の債務が残ります。元々の債務総額が大きいケースや、売掛金も含めた財産総額が大きいケースでは、思ったより債務が減らない場合があり、残った債務総額を最大60回の分割で返済しきれるか、という弁済能力の問題が生じる場合があります。
個人再生による解決に向いている個人事業
・毎月得ている営業利益の増減幅が小さい(収益が安定している)
・債務総額が数百万円程度にとどまる
・高額の売掛金が発生しない
・高額の事業用設備が無い
個人再生による解決に向いていない個人事業
・毎月得ている営業利益の増減幅が大きい(季節により変動が大きい等)
・債務総額が1000万円単位になっている(弁済総額を増加させる要因)
・高額の売掛金が発生する(弁済総額を増加させる要因)
・高額の事業用設備がある(弁済総額を増かさせる要因)
当事務所では、早い段階で弁済予定額の試算を行い、弁済予定額以上の金額を、弁護士費用の分割金として毎月お支払いいただくテストを行っていきます。事業を黒字で維持しつつ、この分割払を毎月きちんと実行できていれば個人再生による解決可能性も十分と判定可能ですが、どのような事情であれ「一部しか払えない」「今月の支払は無理」といった事態になると、個人再生はお勧めできないという結論になる場合もあります。
もちろん改善策のご提案も差し上げますが、具体的な状況によっては、ご依頼後に個人再生から自己破産への方針変更も可能です。
事業の具体的なご状況も踏まえつつ、ご本人のご希望に近い解決となるよう、柔軟に対応させてただきます。
名古屋地方裁判所では、個人事業主の方が個人再生をする場合、裁判所が「個人再生委員」を選任することが原則のため、弁護士費用とは別に、裁判所に納める予納金(20万円程度)を準備する必要があります。
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破産手続では、破産管財人や裁判所の指示に従う必要があり、こちらの希望する方針が常に通る訳ではありませんが、ご自身が現在の個人事業を真面目に営んで黒字経営を維持しており「今の借金さえ無くなれば今後は大丈夫です」という姿勢を示す事ができれば、管財人や裁判所としても、可能な範囲で事業を続行する方向での検討を行ってもらえるものと当事務所は考えています。
個人事業は業態・規模も様々ですから、ケースバイケースの検討が必要となります。
より適切な進行となるよう、実際のご状況に応じて、より安全な進め方を弁護士からご提案します。
費用の分割払も柔軟に対応しております。
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