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自己破産・免責が終わり、ずっと後になってから

先日、かつて当事務所で会社破産を扱い、もう1年以上前に全て業務完了した件の元社長さんから、久しぶりにお電話をいただきました。

少しお話しをしてみたところ、年金事務所(以前でいう「社会保険事務所」)から破産会社について、何か書面が届いたそうです。
電話では状況がよく分からないので「その書面に何が書かれていますか」というお話をしたところ、断片的に「任意納付」「道義的責任」という言葉が聴取できました。

 

会社破産を扱っている弁護士であれば、こうした単語を聞くと「会社が滞納していた社会保険料について、会社が自己破産したことで回収できなくなったため、会社の元代表者に任意で支払わせようとしているものではないか」という予測が可能ですが、この段階ではまだ何ともいえません。

 

取り急ぎ、その書面を入手して内容を確認したところ、「社会保険料の納入について」というタイトルの文書と「事情書」と称する書面が同封されていました。
「事情書」の記入欄では、「事業の状況」「事業再開の見込み」から始まって「事業主の生活状況」「事業主の収入の有無」「収入を生ずる理由、金額」に加えて「任意納付の意思」さらに「家族の生活状況」などを問うていました。
またこの回答には、役所への提出期限が設けられており、その提出期限は本書面の作成日付から8日後となっていました。
破産手続が確定した日付も記載されていますから、会社の破産手続が正式に全て完了したことを知った上での通知となっています。

 

弁護士としては、やはり何らかの義務や強制力を伴う通知ではないと判断しましたが、それにしても相当に無神経といいますか、乱暴な内容と感じました。

 

基本的な部分ですが、会社の負債は会社の負債であり、一部の例外を除いて、会社の代表者が連帯責任を負うものではありません。また、会社について正式な破産手続がとられた以上、会社の滞納社会保険料を支払うかどうかの判断は、破産手続の中で実施されているはずです。破産手続が既に終わり、未納の社会保険料を支払うべき会社は既に消滅しているのですから、元代表者の方がどう生活していようと、関係がない話のはずなのです。

 

なのに、役所がそうした事を十分理解した上で、今頃になって「元代表者に収入はあるか、金額はいくらか」「その理由は何か」という事にとどまらず、家族に関することまで回答を求め、一週間以内に提出しろという書面を送ってきたのです。
「全てが終わった」と思っていたら今頃になって、役所からこのような厳しい内容の書面が届けば、元社長さんがびっくりするのも当然です。

 

ともかく私自身が取り急ぎ、年金事務所に電話して確認を行いました。結果は予想通りのもので、担当者からの回答は「支払い義務は無い」「回答義務は無い」「事務処理上のもの」「返事がないからどうというわけではない」というものでした。
ただ、送付されてきた書面には、そうした説明は、何も記載されていません。

 

当HPでもご紹介している通り、会社の破産は一個人が破産する場合より規模も複雑で、大掛かりなものになります。難しい部分は当事務所が万事サポートをいたしますが、ご自身の事業を倒産させることについて、社長さんには大変なストレスがあったことでしょう。

 

このように大変な思いをして、会社とご自身について自己破産の手続を全て終え、もう1年以上が経過している時です。ご本人もようやく、過去の苦しい記憶が薄れかけた頃に、こうした何の請求根拠もない、乱暴な内容の通知を送りつけるやり方を目の当たりにすると、他に適切な方法が考えつかないのかという気持ちになります。結局、今後このような書面を二度と送らないという確認をして、その場は終了となりましたが、私も元社長さんも、何か釈然としない気持ちの残る出来事でした。

 

小規模の会社では、資産・負債ともに、会社と代表者の名義が混ざった状態になっているケースがよくみられます。破産手続では、これをきちんと分けていき、これは会社の資産、これは代表者個人の負債、という整理をしていくことが基本的な業務の一内容です。
会社の負債はあくまで会社の負債であり、何か例外的な事情がない限り、代表者の方が個人資産をもって賠償しなければならないということはありませんから、そうした点は知っておいてください。

 

また、当事務所では過去にご依頼をいただいた件について、この程度のアフターサービスはすぐ対応可能ですから、何かあればお一人で心配される前に、すぐご連絡をいただければと思います。