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自己破産を検討していたところ、親が亡くなった場合

・自己破産を検討中の方
・自己破産を弁護士に依頼して破産申立を準備中の方

こうした方のご両親が亡くなられた場合、「ご本人が相続した財産」の有無・内容は、自己破産の手続に大きく影響する場合があります。
特に、亡くなった方が不動産(土地・建物)を所有されていた場合は要注意です。
 

<不動産の遺産がある場合 自己破産への影響一例(※)>

・同時廃止が認められず、通常管財事件(予納金40万円)になる可能性
・少額管財事件(予納金20万円)も認められず、通常管財事件になる可能性
・相続した不動産を、破産管財人が売却する事になる可能性
・親族がお金を出して、不動産を破産管財人から買い取る事になる可能性
・配当案件になると債権者集会が1回では終わらず、免責許可決定まで長期間かかる可能性


相続した財産によって、ご本人の借金を完済できるケースであれば、もちろん上記の問題は生じません。
 
一方、「相続した不動産の価値がさほど大きくない」「居住者がいるため不動産を売却できない」といったケースでは、場合によっては相続放棄を行うことにより、上記問題の発生を回避して破産手続をスムーズに進められる場合があります。
 
弁護士が具体的な進め方を丁寧に説明いたします。
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名古屋地方裁判所での運用を前提とします。また実際の進行は案件内容により変わるため、確定的なものではなく可能性のある展開としてご紹介しています。
 
 

親が亡くなった時点の権利関係

ご本人の父または母が亡くなられた時点では、相続人の方々による遺産分割協議や相続登記等は、まだ行われていません。亡くなった方(被相続人)が不動産を所有されていた場合、この段階では、各相続人の方々が法定相続分にもとづいて不動産を共有している状態になります。

例:父親が死亡し、母親(配偶者)・兄・弟(ご本人)が残された場合
→父親名義の自宅(土地・建物)がある場合、弟(ご本人)は法定相続分(4分の1)に相当する土地・建物の共有持分を有していると考えます。

4分の1であっても「不動産の所有者」ですから、この点は注意してください。

 

自己破産をしたい本人が、不動産の所有者である場合、どうなるか

 

同時廃止で進められなくなる

不動産をお持ちの方が自己破産する場合、その不動産の価値にもよるものの、基本的には同時廃止ではなく管財事件になります。
破産手続の中で、破産管財人が不動産を売却してお金に替える業務を行う事になるため、こうした場合は管財事件といっても少額管財事件(予納金20万円)ではなく、通常管財事件(予納金40万円)を想定する必要があります。
 

少額管財事件でもなく、通常管財事件になる

ギャンブルや浪費、FXなどを原因とする債務増加があるため少額管財事件(予納金20万円)での破産申立を想定していたケースについても、不動産の所有者になった時点で、通常管財事件(予納金40万円)に切り替えて準備する必要があります。
 

不動産は自由財産になるか?

管財事件では、ご本人の財産を手元に残せるように「自由財産拡張の申立」を行います。自由財産拡張は、ご本人の生活維持のために必要といえる財産を対象としており、「現金」や「預金」「生命保険」「自動車」「退職金」等を想定しています。「不動産」は自由財産に含まれないと考えられており、自由財産拡張により不動産を残す事はできません。
 

不動産を残す方法は無いのか?

不動産は自由財産に該当しないため、破産管財人が売却してお金に換え、債権者への配当を行う方針が原則となります。
 
先の例のように、亡くなった父の不動産を母・兄・弟(ご本人)の3名で相続している場合、ご本人の有する不動産持分(4分の1)のみを不動産取引市場で売却することは現実的でないため、他の相続人である母または兄に、ご本人の不動産持分を適正な金額で買い取る方向で、破産管財人が交渉を行う事になるでしょう。お金で解決可能な話とも言えますが、ご親族に金銭的な負担を求める事になります。
 
なお、不動産の市場価値が非常に低く、ご本人の手元資金で支払い可能な金額である場合は、不動産の価値に相当するお金を破産管財人に差し入れることで、破産管財人がその不動産を「放棄」すると、結果的に不動産をお手元に残せる可能性はあります。
 

今から遺産分割協議を行ってよいか

 
相続人全員の同意が得られるのであれば、破産申立前に遺産分割協議を行い、相続登記を行う事は、法的には可能です。ただ、これから自己破産を予定しているご本人の財産を「他の相続人に逃がす」ような遺産分割を行うことは、その後の破産手続において問題視される可能性があり、お勧めできません。
後述する通り、相続放棄により解決する方が安全・確実です。
 

個人再生による解決

 
個人再生は、財産の売却を伴わない手続なので、不動産をお持ちの方であっても選択可能です。ただし、個人再生は「ご本人の有する財産の総額」よりも多い額を返済しなければならないというルールがあります。
 
仮に、ご本人の有する不動産持分の市場価値が300万円である場合、個人再生をしても最低300万円の債務が残ります。自動車や退職金など他の財産をお持ちの場合、それらも上乗せされて最低弁済額が上がっていきますから、「個人再生をしたものの、さほど債務が減らない・全く減らない」という状態になっていきます。
 
不動産の価値がさほど高くないケースや、ご本人の法定相続分割合が低いケースであれば、個人再生による解決が有効な解決方法となる場合もあるでしょう。
 

相続放棄による解決

 
自己破産の準備中である方が「相続放棄」を行う事は、遺産分割協議とは異なり、破産手続に悪影響を及ぼす事はありません。
 
相続放棄は、結婚や養子縁組と同様の「身分行為」という法的行為であり、相続放棄するかどうかは他人に指図されず、自ら決めてよいとされているためです。
 
相続放棄をすると、その方は「最初から相続人ではなかった」事になり、亡くなった方から何も相続していない前提で自己破産や個人再生の手続を進める事ができます。
 
当事務所では相続放棄の申述業務も取り扱っていますから、自己破産のご依頼とは別件としてご依頼をいただければ、ただちに相続放棄の準備を開始します。相続放棄の必要書類である戸籍等も弁護士が代理取得できますから、全てお任せいただけます。
 
相続放棄の申述は、相続が開始した事を知ってから3か月以内に行う必要がありますから、この期限だけは忘れないようにしてください。葬儀が終わられて少し落ち着いた頃には、当事務所までお知らせいただきたいです。
 

補足:相続放棄を回避できないか?

 
相続放棄をすると遺産を全く相続できませんから、ご本人としては少し釈然としない部分もあると思います。
 
しかしながら、ご本人が「これから自己破産する」という予定が動かないのであれば、一定の市場価値がある不動産を無条件に残す方法はありません。
前述のとおり「お金で解決する方法」はありますが、不動産の市場価値によっては、かなりの金銭負担をご親族にお願いする事になってしまう可能性もあり、どのような展開になるかを事前に予測しきれません。
 
ご本人が相続放棄の申述を行った場合、先の例でいえば無条件に母と兄が遺産の相続人となり、管財人への金銭支払は不要です。後で母と兄の間で遺産分割協議を行い、仮に「母が全て相続する」という遺産分割協議を行った上で相続登記をしておけば、ご本人の破産手続が無事終わった後で母親が亡くなった際の相続では、兄と弟(ご本人)が再び相続人になります。
もちろん、常にこのような都合のよい展開にはならないかもしれませんが、総合的に判断すれば、相続放棄を行っておく事が最善の選択肢となるケースは多いと思います。
 

補足:遺産が現金・預金のみであるケース

 
亡くなった方が不動産の所有者ではなく、残された遺産が現金・預金のみのケースであれば、他に理由がない限り通常管財事件(予納金40万円)にはならず、少額管財事件(予納金20万円)や同時廃止の方向になるでしょう。
 
通常管財事件の予納金が高額であるのは、破産管財人が不動産を売却してお金に換える業務の手間賃を考慮しているためですから、換価業務が必要ないケースは、通常は少額管財事件になります。
相続した現金・預金が少額で、トータルで見てご本人の同時廃止基準をクリアしていれば、同時廃止が認められる場合もあるでしょう。
 

弁護士が無料相談にて詳しくご説明します

 
自己破産の準備中に相続が起こってしまうと、以上のような問題が生じる可能性があります。特に、高齢のご両親が不動産を所有されているケースについては、速やかな申立準備をお勧めしております。
ご本人の相続問題が、自己破産や個人再生の手続に悪い方向での影響を与えないよう、注意しつつ業務を進めてまいります。
 
詳細は弁護士から丁寧にご説明を差し上げます。
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